「失ったものを数える人あり 与えられたものに感謝する人あり」豊島学由

 年が明け、また新しい一年がスタートしました。先年も本当に多くの方にお世話になりました。誠に有難うございます。引き続き本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 去年をあらためて振り返ってみると、あっという間に感じる一方で、やはり多くの出来事がございました。特に、例年を上回るほど、多くの方のご葬儀のご縁に遇わせていただきました。一年を過ごさせていただいたことを、めでたいと喜ぶ一方で、私のいのちの節目にも、また1年確実に近づいているということを知らされます。

 鳥取に戻ってきて、今年で18年目になりますが、最近は見知った方ばかりの葬儀になってきました。「あの方もご往生されて何年にもなるな・・。」と振り返る瞬間が、年々降り積もっていくように感じます。そんな大切な方々の中に、お寺のすぐ近所に居られた一人のお同行のおばあさんがいらっしゃいます。

 こちらに帰ってきたばかりの私は、お寺を継ぐことに対する迷いや抵抗が残っていました。ある日、お寺の近くを散歩していると、向かいから一人のおばあさんが駆け寄ってこられ、いきなり私の手を握って、「よう帰ってこられたなぁ」と涙を流して喜んでくださいました。その姿を見て、本当に申し訳ない気持ちになりました。お寺を顧みることのなかった私は、すぐ近所に居られる方すら知ろうとしていなかったのです。こんな方々の思いを無碍にして、自分の勝手な思いで生きようとしていたのだと思い知らされました。ですが同時に、きちんとお寺と向き合っていこうと心を決める大きなきっかけともなっていきました。

 私の眼は形あるものしか捉えることができませんから、つい無くしてしまったものを数えてしまいます。でも、私の目には映らなくとも、私の知っている形ではなくなっていても、沢山の縁となって与えられているものが、今の私を支えて下さっています。

 手を合わせてお念仏申させていただくとき、こんな私に手を合わせる意味を教えて下さった方々にあらためて出会わせていただいていると感じます。申し訳ない、ご迷惑をおかけした、優しい言葉をもらった、大切なことを教えて下さった――その思いが、私の手を合わさせて下さいました。

合掌

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